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  • 2025.11.06

    HEAT20が注目される理由とは?従来の省エネ住宅基準と併記される理由も解説

    こんにちは、ダイシンビルドのWEBスタッフ後藤です。
    今年の頭に、弊社のWEBサイトがリニューアルいたしました。
    それに合わせて、施工事例のデータも以前より詳しくなり、Q値やC値以外にも様々なデータを掲載させていただいております。
    HEAT20もその一つです。
    今回のコラムでは、雑誌や施工事例で掲載されるのが当たり前となりつつある、HEAT20についてお伝えさせていただきます。

    目次

    HEAT20とは

    HEAT20とは、「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」が定めた、日本の高断熱住宅の性能基準の1つです。
    HEAT20は快適な暮らしと省エネの両立を目指し作られた基準で、地域区分と「G1」「G2」「G3」という3つの住宅外皮水準によって、断熱性能が定められています。
    研究組織発足時から、国が定める省エネ基準より厳しい基準が設けられ、一番下のグレード「G1」の水準でも、「H28省エネ基準」や「ZEH基準」より高いレベルです。

    なお、HEAT20には、各水準への適合を証明する「住宅システム認証制度」があり、省エネ性能の信用付けとして活用されています。
    HEAT20の文字をよく目にするようになったのは、このことが理由の一つです。

    HEAT20の歴史

    2009年、民間で「20年先を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」という研究会が発足したのが、HEAT20の始まりです。
    発足メンバーは、国の省エネ基準が不透明な状況に危惧を覚えた研究者や住宅・建材の生産者で、実は新住協の生みの親「鎌田先生」の教え子である鈴木 大隆さんが主となり立ち上げられました。
    2020年に「20年後を見据えた日本の高断熱住宅研究会」という一般社団法人になり、2022年3月に住宅システム認証制度を開始しました。
    このシステムには高い水準の信用性を付与する制度が導入されたことで、建物の信用付けとして認証を取得する流れが全国で起きました。

    このように記載すると、HEAT20は省エネを目的とたシステムのようですが、発足目的である「室内の温熱環境を改善して、住まう人の快適性や健康を向上させること」は、発足から15年以上が経過した現在も変わりありません。

    HEAT20が注目される理由

    ここ数年で一気に目にする機会の増えたHEAT20。
    なぜここまで一般的な基準となったのか、ここではその理由をお伝えいたします。

    1:脱炭素化と住宅

    2020年10月に日本政府が「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表したことにより、社会は脱炭素に向けた動きに舵をきりました。
    その動きの中で、社会全体が排出するCO2のうち、住宅が占める割合が大きかったことが判明し、住宅の省エネが一気に謳われるようになったのです。
    住宅の省エネには断熱性能の向上が欠かません。
    そこで、既に厳しい独自基準もっていたHEAT20の良さに目が向けられ、2022年に認証システムの運用が始まったことでより多くの人に注目されるようになったのです。

    2:HEAT20と他の基準との違い

    今や住宅に欠かすことのできない「断熱性能」ですが、現在の日本には複数の基準が存在し、それぞれ異なる目的や役割で運用されている現実があります。
    特に、断熱等性能等級とHEAT20については列記されることも多く、家づくりを始めたばかりの頃には皆さん「何が違うの?」と思われたのではないでしょうか?

    まず、断熱等性能等級は、国が定める基準であり、HEAT20は民間団体が提唱する基準であるという、大きな違いがあります。
    ただどちらも、高断熱住宅の普及を目指しており、どちらも家づくりの指針として重要と考えていただいて問題なく、ここで重要になるのは、断熱等性能等級とHEAT20の関係性です。

    断熱等性能等級は、住宅性能表示制度の一環として、2000年に国土交通省が定めた制度です。
    2022年4月に「等級5」が、2022年10月には「等級6」と「等級7」が新設されました。
    これによって、これまで最高だった「等級4」は最低基準となり、「等級5」よりもさらに高い断熱性能を目指す指針が国として整いました。

    一方で、HEAT20は歴史でも触れたように、国の制度とは異なる、民間の研究会がより高い断熱性と快適性を目指して作った断熱性能基準です。
    HEAT20の基準は、G1が等級5、G2は等級6~7,G3は等級7を上回る断熱性能に相当すると考えられています。
    ただ、HEAT20はUA値で見た数値上だけではなく、「室温をどれだけ安定させることができるか」「冬でも無暖房で最低何度を保つことができるか」といった、暮らしに基づく評価軸を持っています。

    その為、断熱等級は法的な基準であり、最低限クリアしておくべき基準、HEAT20はより快適に暮らすために必要な基準と考えていただくのが最適であることから注目され、断熱等級と併記されるようになりました。

    HEAT20のグレードについて

    ここまで度々出てきましたが、HEAT20には3つのグレードが存在しています。
    一見、住宅の断熱性能を「G1」「G2」「G3」にランク付けしているようにも見えますが、HEAT20のランク付けは、単なる数値の比較ではなく「快適で健康的な暮らしをどの程度実現できるか」という視点で設定されています。

    1:UA値HEAT20の性能比較

    HEAT20のグレードを表すために欠かせないのが、UA値です。
    UA値は、「数値が低いほど断熱性が高い」という、住宅の断熱性能を示す指標です。
    HEAT20では、日本全国の地域区分ごとに、G1・G2・G3の目標UA値が定められており、弊社のある大阪は6地域に該当します。

    図は建築省エネ気候|地域区分より

    この基準は、エネルギーを削減すればよいというものではなく、「無暖房状態でも室温を13度以上に保つことができる」など、住まい手の健康や快適性を確保するとこを目的として、導き出された数値です。

    2:室温とG1・G2・G3について

    HEAT20では、最低レベルのG1でも最低室温を約10℃に保つよう定められています。
    なぜ10℃なのか、その理由は非暖房室の表面結露を防止するためです。

    結露は住まいを傷める原因のひとつであるため、住まいの長寿命化には大敵です。
    その為、HEAT20の最低グレードであるG1であっても10℃に保つ必要があり、G2なら13℃、G3なら15℃を確保するように定められています。
    ただし、G2とG3については結露対策であることは勿論のこと、室内の温度むらを小さくすることで、住まい手の暮らしやすさの向上や温度によるストレスの軽減を考えた上で設定されています。

      1.2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
    居室連続暖房 LDK平日連続暖房、他は部分間歇 部分間歇暖房
    冬期最低室温(OT)
    (3%タイル値)
    平成28年 概ね10℃を
    下回らない
    概ね8℃を下回らない
    G1 概ね13℃を
    下回らない
    概ね10℃を下回らない
    G2 概ね15℃を
    下回らない
    概ね13℃を下回らない
    G3 概ね16℃を
    下回らない
    概ね15℃を下回らない 概ね16℃を
    下回らない
    15℃未満の割合
    (面積比による按分)
    平成28年 4%程度 25%程度 約30%程度
    G1 3%程度 15%程度 約20%程度 15%程度
    G2 2%程度 8%程度 約15%程度 10%程度
    G3 2%未満 5%程度 2%未満

    上記の表は、住宅内部で15℃未満となる時間・面積が住まい全体でどれぐらいあるかを示したものになります。
    実際の住まいにおいては、時間だけではなく空間の温度むらも考慮する必要があることから、HEAT20が独自の指標で作ったものです。

    3:省エネルギーとG1・G2・G3

    省エネルギー基準と一言で言っても、どの程度のエネルギー削減効果があるかを示すには、まず比較する基準を示すことが重要です。
    HEAT20では、「平成28年省エネ基準」を基に、「平成28年基準からの暖房負荷削減率」を示しています。

    また、性能の低い住宅であったとしても全館連続暖房していれば、室温の維持は可能です。
    しかしそれは、現実的な話ではありません。
    その為、HEAT20では「平成28年省エネ基準における間歇暖房時の暖房負荷に対する全館連続暖房としたときの暖房負荷削減率」も示しています。

      1.2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
    居室連続暖房 LDK平日連続暖房、他は部分間歇 部分間歇暖房
    平成28年基準からの削減率 G1 約20%削減 約30%削減 約35%削減 約45%削減 約40%削減
    G2 約35%削減 約40%削減 約50%削減 約60%削減 約55%削減
    G3 約55%削減 約60%削減 約70%削減 約80%削減 約75%削減
    全館連続暖房時の暖房負荷増減率
    (対平成28年基準居室のみ暖房)
    G1 約10%削減 約5%増加 約35%増加 約15%増加 約50%増加
    G2 約25%削減 約20%削減 平成28年レベルと概ね同等のエネルギーで全館連続暖房が可能
    G3 約50%削減 約45%削減 約40%削減 約55%削減 約40%削減

    10:各地域区分の代表都市における外皮性能水準G1・G2・G3を満たすUA値について

    HEAT20では、「住宅シナリオ」という、住宅の「室温の質(ノンエナジーベネフィット)」と「省エネルギー(エナジーベネフィット)」の両立を目指した住まい方と性能基準を提唱しています。
    地域ごとに定められた基準を満たすことを目的としたもので、UA値(外皮平均熱貫流率)だけでなく、より具体的な住まい方を評価するものです。

    地域の区分 1・2地域 3地域 4地域 5地域 6地域 7地域
    代表都市 札幌 盛岡 松本 宇都宮 東京 鹿児島
    外皮性能水準別
    外皮平均熱貫流率UA>
    [W/(m2・K)]
    平成28年基準 0.46 0.56 0.75 0.87 0.87 0.87
    G1水準 0.34 0.38 0.46 0.48 0.56 0.56
    G2水準 0.28 0.28 0.34 0.34 0.46 0.46
    G3水準 0.20 0.20 0.23 0.23 0.26 0.26

    HEAT20のグレードで暮らしは違うのか

    HEAT20のグレードが上がると、住まいの質が向上し、暮らしの質も向上すると言われていますので、グレードによってどのような暮らしになるのかお伝えいたします。

    グレード1の場合

    グレード1は断熱等級5程度の断熱性能で、従来の省エネ基準を上回る快適性が確保できます。
    例えば、冬にトイレに行くと寒い、廊下に出ると凍えるということは無くなり、家全体をある程度均一な温度に保つことが可能です。

    グレード2の場合

    グレード2は断熱等級6~7程度の断熱性能です。
    グレード1よりもさらに室温のバリアフリーが実現され、エアコン1台で家全体を効率的に温めることが可能です。
    温度ムラが少ないため、ヒートショックのリスクが大幅に軽減すると考えられています。

    グレード3の場合

    グレード3は断熱等級7を超える断熱性能で、無暖房でも、ほぼ13~15度以上を維持できるように考えられています。
    暖房費の大幅削減は勿論、常時快適な温熱環境が実現します。
    雪国ではその性能の差は顕著で、外気温が氷点下になる地域でも、室温が極端に下がることが無く、24時間快適な暮らしが実現できます。

    ただし、グレードが上がるごとに住まいの質が向上すると同時に、建築費も向上します。
    その上、雪国以外ではグレード2と3にあまり差が無い地域も多々あるため、建築コストと、自身が暮らす地域区分を照らし合わせて、グレードを選ぶことが重要です。

    まとめ

    HEAT20やQ値など、断熱性能を表す数値には基準や目標と言われるものが多々あります。
    基準や目標の数値が出ていれば安心、出ていなければ不安と思われがちですが、実は数値が出ていても住みにくい、心地よくないという家があるのが実情です。
    そんな中、HEAT20は保つ温度を基準としているため、信用できる数値として一気に一般へと広がりました。

    ですが、それでもなお数字はあくまで数字にすぎません。
    大切なのは、そこに住まう人がどう感じるかということです。
    もちろん、数字を無視すれば良いということではありません。
    また、最上級のグレードや等級であればよいということもでありません。

    大切なのは、数字が示す通りの心地いい空間が出来上がっているのか、数字が示す通りの省エネになっているのか、そして、費用対効果に無駄が無いかしっかり考えることが重要だということを忘れずに、家づくりを行ってくださいね。

    HEAT20のグレードを記載した、弊社の施工事例はこちらからご覧いただけます。
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