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家づくりコラム焼杉板のメリットデメリット

こんにちは、ダイシンビルドWEBスタッフの後藤です。
突然ですが、皆さんは理想の家を思い浮かべるとき、どんな外壁材をイメージしますか?

いきなり外壁材?外観のイメージじゃなくて?と思われるかもしれませんが、ダイシンビルドでは最初から「焼き板を使用した板張り」に決められているお施主さんが多くいらっしゃいます。
実際、施工事例にも多数の事例を掲載させていただいております。
今回は、弊社のお客様に人気の高い、板張りの「焼杉板」についてお伝えいたします。

そもそも板張りとは?

板張りは外壁の材として板を採用した工法ですが、外壁工事には2種類の工法があり、その二つは全く違う方法で施工されます。
1つ目は、今回は詳しくお伝えしませんが、湿式工法と言います。
漆喰やモルタル、コンクリートなどを現場で生成し、左官職人が手仕事で外壁を仕上げていく工法です。


施工事例:2021吹田市の家より、漆喰の外壁

2つ目は、乾式工法。
工場などで生産されたボードや部材を、現場で取り付けていく工法です。
よく聞くサイディングとは、この生産済みボードのこと指しています。
サイディングと言うとガルバリウム鋼板やレンガやタイル調のような工業生産品を想像されるかもしれませんが、実は木板もサイディングの一種です。
理由は、現場で焼き板を取り付けて外壁を作っていくからです。

湿気ているか乾いているかの違い的な名前の付け方が面白いですが、出来上がっているものを施工するか、材料から作り上げるかの違いですね。

板張りは、出来上がった部材を現場で貼り付けていくため、「木材サイディング」に分類されています。
ただ、他のサイディングと印象が大きく違う理由は、板張りに使用するのは他のサイディング材と違い、自然素材であるため柄のリピートが無いということと、雨水などが留まることなく下に落ちるようにするため、縦張りが基本とされているためです。


施工事例:2022堺市泉北の家より

人気の焼杉板とは?

焼杉板とは文字通り、焼いた杉の板のことを指します。
焼くと一言で言っても、焦がす程度ではなく表面が炭化するまで焼くことで、腐敗を防ぎ耐久性能をアップさせたものです。

何故炭化させると腐りにくくなるのか。
それは、木材が腐る原因が腐敗菌の繁殖によるからです。
腐敗菌の繁殖に欠かせないのが、温度と酸素、水分、栄養分。これら4つが全て揃う事で、腐敗菌が繁殖し、木を腐らせていきます。
逆に言うと、どれか一つでも欠けてしまうと、木は腐りにくくなるということです。

では、焼杉板は何が欠けているのか・・・というと、それは酸素です。
炭化層には酸素の供給を阻止する働きがあり、かつては防火性を高める為にわざわざ焼いた板を外壁に使っていたというほどです。

焼杉板の種類と作り方

焼杉板は、名前の通り焼くことで表面が炭化した杉板のことを言います。
焼き方の方法には大きく二種類あり、
1つ目はバーナーで工業生産的に焼く方法。
2つ目は伝統的な手焼きを行う方法です。

手焼きは杉板を煙突上の三角形にし、その内側を焼く方法です。
手焼きには、バーナーで表面を焼く製造方法よりも、炭化層が厚く固くなるという特徴があります。

焼杉板を外壁に採用するメリット

他の外壁材と比べて無駄がなくメンテナンスが少なくて済む

焼杉板の一番のメリットは、腐敗しにくいという点からも分かる通り優れた耐久性です。
多くの外壁材の耐久性が15年~20年程度と言われる中、自然素材である焼杉板は、30年から50年は持つと言われています。
実際、焼杉板には長く使用されてきた歴史(ノーメンテナンスで100年を超える建物も)があるので、大げさな数値ではないと言い切れます。
もちろん、炭化層にしっかりと厚みがあり、丁寧な施工がされた場合に限りますが。

杉板は木材の中でも手に入りやすく安価な上、焼いているので他の外壁材のように、塗装費も必要ありません。
焼杉板を張るだけです。

もちろん杉板を焼くという工程があるため、安い!と言い切れるものではありませんが、
工業生産品を使用した外壁のメンテナンスは、塗り替えやコーキングのやり直しが15年~20年ごとに必要となると言われており、その際の費用は数十万~数百万単位にものぼります。

その点、焼杉板なら基本的にメンテナンスの必要が無く、台風で物が飛んできて傷んでしまった場合でも、傷んだ板を交換するだけで済みます。
長い目で見ると、とても安く無駄が無い材と言えるかと思います。

耐火性

普通に木を燃やすと、木の中に含まれる炭素は空気中の酸素と結合し二酸化炭素を放出します。
残るのは灰だけです。
しかし、無酸素または低酸素状態で木を燃やすと、木材に含まれている炭素が空気中に放出されず固体として残ります。
この炭は、基本元素の炭素であるため、それ以上燃える余地がありません。
結果、万一火災が起こった場合でも、火が燃え広がりにくいのです。
「燃える余地が無いから耐火性が高いという」先人の知恵に頭が下がります。

高いデザイン性

もちろん好き嫌いはありますが、真っ黒の外観にあこがれる方も多いのではないでしょうか。
黒の外観はシャープな印象があり、一見して「カッコイイ」デザインになります。

焼杉板の場合は、同じ黒でも自然素材ならではの非同一性があり、木の風合いや、表面の凸凹によって複雑に光を反射する黒になります。

塗装で黒にした場合、太陽の紫外線により色が薄まりチョーク現象という経年劣化を起こしますが、自然素材である焼杉板の場合、炭化層が少しずつ剥がれ色が少し白っぽくなることでますます味と深みが加わった経年美化を起こします。
無垢材のコラムでもお伝えした通り、自然素材だけが持つメリット。
傷になるか味になるかの違いですね。

廃番が無い

ほとんどすべての工業製品においていつ廃番になるか分からないというデメリットがあります。
これは家電や化粧品、加工食品でも良くあることで、時間がたつと同じものを手に入れることは非常に困難になります。
その点、焼杉板はそもそもいつから作られたかも分からないほど、古い歴史があり、一度も姿を変えていないという特徴があります。
(炭化なので変えようが無いのですが・・・)
廃番することが無く、いつでも同じものが手に入るという安心感は、長く持つ住宅が主流になっていくこれからの時代には非常に大きなメリットです。

環境負荷が低く、日本の風土に合った素材である

自然素材である焼杉板は、他のサイディング材に比べて制作時における環境負荷が低いという特徴があります。
材になっている杉板を燃やすだけなので、過程を考えても納得ですよね。
その上、張替えサイクルが他の素材と比べて非常に長く、施工後の手入れも、トラブルが発生した板を取り換えるだけという無駄のなさです。

また、国土の約7割が森林という日本にとって、自国で育てた木を使うということは山を守り、地域の産業の活性化につながるので、これからの社会にとっても大きなメリットです。

焼杉板のデメリットは?

焼杉材のメリットをいくつかお伝えしましたが、もちろん焼杉材にもデメリットはありますので、ご紹介いたします。

防火認定

焼杉板には耐火性能があるとお伝えしましたが・・・、木材であることに変わりはありません。
そのため、現在の建築基準法上さまざまな制限があります。
防火に配慮が必要な住宅密集地などでは、外壁素材として使用する場合必要な措置がある場合もあります。
どのエリアでも気軽に使用できるわけではないので、焼杉板の外壁が良いなと言う場合は、事前に施工会社に伝えておくのが重要です。

汚れる

皆さん、炭を触ったことはありますか?
ある方はきっと汚れた覚えがあるかと思います。
焼杉材の表面は「炭」です。触ると汚れますし、よりかかると汚れます。
洗濯物が触れても汚れます。

そのため、日常的に手で触ったりする場所や、通路が非常に狭い場所へ焼杉板を施工するのは、少し気を付ける必要があります。
ですが絶対に無理というのではなく、汚れの付きにくい焼杉板を採用したり、別の素材と組み合わせて焼杉板を使用するということも可能です。


施工事例:逆瀬川の家より、玄関回りの外壁板を変えることで明るい印象になった外観

反りや割れ

先にもお伝えした通り焼杉板は自然素材である木材です。
そのため反りや割れが発生することもありますし、その場合割れたところから中の木材が見えてしまったり、反った部分に水が溜まってしまう危険があります。

ただ、上記を防ぐために、焼杉板は縦張りが推奨されているので、このデメリットはあまり気にする必要はないかと思います。

まとめ

焼杉板は古くから日本家屋や蔵の外壁などに多く利用されてきた歴史があります。
そのため、どうしても和の印象を抱かれる方が多く、長い間敬遠されがちでした。
建築家に使われ始めたのは2000年代後半になってからと言う通り、再注目されだしたのはごく最近です。
当初はかっこよさから注目されだした焼杉板ですが、今ではその防虫性や腐敗効果の高さ、耐久性やメンテナンス費の安さから日本国内だけでなく、世界各地で広がりを見せています。
今では入荷迄数か月待ちになるほど、弊社でもご契約後すぐに発注をかけなくてはならないほど人気です。

このように近年非常に人気の焼杉板ですが、すべてのハウスメーカーや工務店が採用している外壁材ではありません。
施工自体していない会社さんも多々ありますので、絶対に使用したい。気になっているという方は事前の確認を忘れないようにしてくださいね。

後藤 泉


阪神淡路大震災で自宅が半壊。その後慌てて建て替えた家は、気になる箇所が多く、夏は暑く冬は寒い家でした。そんなことから住宅業界に興味を持ち、ダイシンビルドのWEBスタッフを務めさせていただくようになりました。どうぞよろしくお願いいたします。プロフィール写真は、我が家の愛猫です。