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  • 2025.10.31

    京町家についてご存じですか?

    こんにちは、ダイシンビルドWEBスタッフの後藤です。
    先日、代表の清水と出会ってから丸12年が経過し、ついに13年目に突入したことに気が付きました。
    あっという間だった12年の間に、清水の「こうなると思うわ」という発言がいくつも事実に変わっていきました。
    高断熱住宅の常識化、電気料金の値上がり、職人の急減による復旧の遅れなどなど、上げだしたらきりがないほどです。
    本当に言っていたの?と気になる方は、清水のブログを古い方から順番に読んでみてください。
    10年以上経過しても全く古さを感じさせない考えが綴られておりますので。

    そんな清水から聞いた話の1つが、京都の景色を守りたいというものでした。
    どういう意味で発したのか、最近ようやくわかってきました。
    そこで今回のコラムでは、京都の景色に欠かすことのできない京町家についてお伝えしてまいります。

    京町家とは

    京町家は、平安時代中期に原型が形成され、江戸時代から昭和初期にかけて、京都の都市部で発展してきました。
    京町家と古民家、似たようにも思いますが、実は建築方法が違い、「京町家」と呼ばれる建物は、1950年(昭和25年)以前に建てられた、伝統工法(伝統的な木造軸組み工法)の建物を指します。
    「鰻の寝床」と呼ばれるほど、間口が狭く奥に長い間取りが特徴で、玄関から奥まで続く土間部分を「通り庭」と呼び、庭や坪庭があるのが一般的です。
    京町家は、居住スペースと店舗や作業場が一体となっている「職住一体型住居」であることが多く、この点からも京町家が都市の形成と深くかかわってきたことが見て取れます。

    京町家で暮らすことは可能なの?

    京町家で暮らすことは、可能です。
    しかし、暮らせるようにするには高いハードルが存在するので、1つずつお伝えいたしますね。

    京町家にある数々のハードル

    京町家には断熱性・気密性の低さ、火災リスク、修繕費用の高さ、そして駐車場やアクセスの問題があげられるので順にご紹介いたします。

    1:断熱性・気密性の低さ

    京町家は、今から75年以上前に伝統工法によって建てられた建物が対象です。
    その為床下や壁、屋根に断熱材は入っていません。
    それどころか、土壁一枚で部屋の中と外が区切られているような状態です。
    建具も気密性が低く、夏は凄く暑く冬は猛烈に寒いのが京町家の常識です。

    伝統的な木造建築であるため、現代の住宅とは比較にならないほど火災に弱いのが特徴です。

    3:修繕費用が高い

    1,2であたかも我慢すればそのまま暮らせそうな書き方をしましたが、今から75年以上前の木造建築、それもほぼ手入れされていない京町家は、立入ることも躊躇するほど危険です。
    もちろん、丁寧に手入れをされ住まい続けられている京町家はこれには当たりません。あくまで、手入れをされていない京町家が対象です。
    その為、フルリノベーションは欠かすことが出来ず費用が高額になる上、フルリノベーションを行うにもまた障壁があります。
    理由は、京町家の改修には、図面を起こす建築士、図面を実際の形にする職人双方に、伝統工法に対する専門的な知識や技術が必要になるからです。

    4:駐車場の不足とアクセス

    京町家にはほぼ駐車場がありません。
    近隣の駐車場も限られているため、車を使用した生活をされている方にとっては、駐車場の確保に頭を悩ませられることになります。
    その上、京町家は路地裏に位置していることも多く、そもそも車でアクセスすることさえ難しいことも多々あります。

    京町家で暮らすには?

    問題点をお伝えしましたが、問題があっても尚、京町家には強い魅力があり、住まいとして望まれている方も多くいらっしゃいます。
    そこで次は、京町家で暮らすための順序をお伝えいたします。

    1:情報収集

    京町家の特徴や暮らし、リノベーション事例などを調べて、自分がどのような京町家での暮らしを望んでいるか明確にするのが大切です。
    これは、京町家だけでなく注文住宅の場合も同じですが、自分たちを知れば知るほど、自分たちの暮らしに合った家が出来上がるので、ウェブサイトやSNSだけでなく、見学会などに足を運んでくださいね。
    その他にも、京都には京町家を素敵にリノベーションしたお店がたくさんあります。
    趣きある店内は、雑貨を見て歩いたり、カフェでリラックスするだけでも楽しいので、京町家の暮らしが気になった方は京都観光がてら色んな京町家を楽しんでみてください。

    2:京町家探し

    京町家を取り扱っている不動産屋は関西にいくつもありますし、京町家だけを扱っている不動産屋もあります。
    ただ、古いままで販売している不動産屋、フルリノベーションを行ってから販売している不動産屋、フルリノベーションの施工会社を指定した上で販売している不動産屋等、それぞれに違った特徴を持っているので、自分たちは京町家でどう暮らしたいか考えた上で、不動産屋を決めてくださいね。

    他に、京町家のリノベーションを行っている工務店が、一緒に探してくれたり、リノベーションしやすい京町家に強い不動産屋を紹介してくれるサービスを行っていることもあります。
    気になる京町家リノベーションを見つけて、「こんな暮らしがしたいな」と思われましたら、まずは一度施工した会社にご相談いただくことをお勧めいたします。
    一般的なリノベーションと同じく、リノベーションに向いていない京町家も多々ありますので・・・。

    3:改修・リフォーム

    リフォームやリノベーションされている京町家を購入された場合は必要ありませんが、75年以上前に建てられた姿のままならリノベーションやリフォームが必要になります。
    リノベーション・リフォームの種類としては、耐震性を高める工事、断熱・気密性を高める工事、間取りの変更、設備のアップデートが必要になります。

    耐震性を高める

    建築基準法は1950年に制定されました。
    京町家は、1950年以前に伝統工法で建てられた町家を指すため、京町家に耐震性はほぼありません。
    その為、京町家で暮らすためには耐震基準を満たす工事が必須となります。

    断熱・気密性を高める

    京町家には、まず断熱材が入っていません。
    その為、断熱材の追加や、窓の二重サッシ化、隙間風対策など、断熱性・気密性を高める改修が必要です。

    間取りの変更

    京町家は、通り庭に沿うように、店の間、台所、奥の間などの3室が並ぶ間取りが特徴です。
    店の間は、通りに面した部屋を指し、商売を営んでいる場合はお店として、商売をしていないお家では、来客と話す場所として利用されていました。
    今の暮らしとはとても違うため、快適に暮らすためには、間取りを変更する必要があります。

    設備

    キッチンがかまど、お風呂が無いなんて京町家も多々あります。
    その為、キッチンやバスルーム、トイレなどの設備を新たに設ける必要があります。
    その他にも、消防法の関係上、窓や玄関扉を防火対策したものにする必要もあります。

    京町家、ローンは使えるの?

    京町家の購入やリノベーション、リフォームなどで使える一般的な住宅ローンはありません。
    ただ京都には、京町家を対象にした京町家専用のローンや、京町家に適用した住宅ローンがあるので、それらを利用することでローンでの購入が可能となります。
    ただし、京町家ローンを利用する際は、京町家の状態や歴史的な価値を評価するための京町家カルテや京町家プロフィールの提出が必要なことが多いため、注意が必要です。

    新築もあるって本当?

    京町家、1950年以前に建てられたものを指すと書いておきながら、実は京町家は新築もOKなことはあまり知られていません。
    京都市は、京都の景観を守り次世代へと受け継いでいくことを目的として、「京町家の特性を生かした,京都のまちに将来にわたって相応しい住宅」を目指す建物を「新築等京町家」として指定する取り組みを行っています。
    新築等京町家を建てる際には、京都市が定める5つの指針に従い認証を受ける必要があります。

    ※新築等京町家については、京都市が発行している「新築京町家のすすめ」に詳しく記載されておりますので、気になる方はこちらよりご覧ください。

    京町家をお好きな方なら特に問題の無い指針が多いのですが、ただ職人不足の昨今では、指針5「技を感じる」に、伝統工法で建てる必要があると示されているため、伝統工法で建ててくれる会社を探すのがかなり難しいと言えるかと思います。

    まとめ

    私が清水の言う「京都の景色を守りたい」という言葉の意味が理解できていなかったころ、京町家は次々潰されマンションへと姿を変えていました。
    そして、いつの間にか京都の不動産は高騰を続け、一消費者の手の届く価格を優に超えてしまいました。
    京町家に興味を持って検索された方は、その価格に驚かれたのではないでしょうか。

    京都の人気が高まり土地代が上昇したことは勿論ですが、伝統工法に触れることが出来る職人が減ってしまったことも京町家の価格上昇の要因です。
    一度無くなったものはもう二度と蘇ることはありません。
    職人が減り続けている現代では尚のことだと思います。

    だからこそ「京都の景色を守る」ためにも、全てが失われてしまう前に、伝統工法で設計できる設計士と、伝統工法で建てられる大工を大切に育て、未来に目を向けた建築を行っていくことは、これからの工務店に課せられた社会貢献の一つの形だと言えるのではないでしょうか。


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